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20X0年 NEO東京「棚田団地」再生計画試案

「情報過多」時代において都市(文化・教養含む)が発展を継続させるための出発点は
「いかに興味を惹くか(生き延びることができるか)」である。
 
昭和高度経済成長期における東京をひとつの「里山」と見立てた場合、その「里山」を形成した重要なファクター(要因)のひとつが「団地」という「棚田」の存在である。
都内周辺に点在する「団地という名の棚田」(以下、これを「棚田団地」と呼ぶ)で形成される「人間」個々の細胞が、「東京という名の里山」(以下、これを「東京里山」と呼ぶ)において活発に循環することで、都市はひとつの巨大な生命体として存在感を増し、都市経済を形成する原動力のひとつとなったことに疑いの余地はない。
 
都市における「棚田団地」の崩壊危機が叫ばれて久しい。
かつて繁栄を極めた「棚田団地」の至る所で虫食い状態の空き部屋が増加し、古びた外観および周辺環境は住人によって無造作に造成された園芸畑と雑草が入り乱れて混沌とした風景が至る所に存在している。
 
【現状把握】
・郊外の地価は大体どこも1992年から2011年にかけて5割から6割減である
・すでに日本では全住宅のうち14%、約750万個が空き家である(将来予測として43%が空き家)
・UR都市機構の団地(賃貸集合住宅)の全戸の3割が空き家
・東京都人口は2020年の1335万人をピークとして減少に転じ、2070年に1000万人を割り込み
2100年には713万人まで減少(東京都発表)<⇒人口減少>
・東京圏における若年層の未婚率増加、既婚者の出産率低下に伴う余剰住宅物件の増加
・結婚しない団塊ジュニア世代(*)の増加(未婚者で親元に住むパラサイトシングルの増加)<⇒未婚化>
[*2017年の42歳~46歳に相当]
・2040年には1億728万人のうち38%の3868万人が65歳以上の高齢者で占められる<⇒高齢化>
・女性の社会進出に伴う一世帯年収の増加→駅からも遠く都心からも遠い物件の利用価値低下<⇒女性の社会進出>

「棚田団地」の再生は都市存続における喫緊の課題なのか?
そもそも論として、「棚田団地」が再生に値する価値があるのかという疑問にぶつかる。
そんな時わたしは、『平成狸合戦ぽんぽこ』(原作・監督・脚本:高畑勲/制作:スタジオ・ジブリ/1994年公開)というアニメ映画をいつも思い出す。
開発が進む多摩ニュータウン(多摩市)を舞台に、その一帯の狸が化学(ばけがく)を駆使して人間に対し抵抗を試みる様子を描く作品である。
本来の「里山」の住人であった野生の動植物の生命と引き換えに建設された大規模な「棚田団地」の社会的使命は重大である。
「時代にそぐわなくなったから」の一言で、単純にスクラップアンドビルドしてしまうことは余りにも無責任であり、人間の自然に対する冒涜以外のなにものでもない。
また、半世紀以上に渡り育成された「棚田団地民族」による共同体(コミュニティ)を意図も簡単に葬り去ってしまうのは都市文化にとって大きな損失であると考えられる。
そこで本ブログでは、この命題にたいするひとつの方向性を示すことにチャレンジしてみたいと思う。
 
「情報過多」時代において有用なモノ・コトが最優先で取捨選択されていく社会的風潮においてひとつの都市文化を形成してきた
「棚田団地」が都市にとって再び有用な地位を獲得するためには一体何が必要なのか?
結論を言ってしまえば、それは冒頭で述べた通り、「いかに興味を惹くか(生き延びることが出来るか)」という新たな命を「団地」という有機システムに吹き込む作業が必要である。

それではその作業について具体的に考えていきたい。
先ず、現状における大まかな問題点を列挙してみたい。
【問題点】
(1)住民の高齢化に伴う空室率の増加(「ニュータウン」から「オールドタウン」へ)
(2)施設および周辺環境の老朽化(街としての魅力の貧相化)
(3)職住近接化志向による地理的人気の下落(ライフスタイルの変化に伴う長距離通勤地獄の敬遠化など)
大雑把ではあるが、以上のような事象が複合的に絡み合うことにより「棚田団地」の衰退が進行しているものと考えられる。
それでは個々の事象に対応するソリューション(問題解決策)について考えてみたい。
(1)若年層が住みたくなる施策の検討
(2)「スクラップ&ビルド」から「リノベーション」という発想の転換による近未来団地の創造
(3)職住近接を実現するための「クリエイティブ団地」の実現
更に具体的な施策についていくつかアイデアをあげてみたい。
 
(1)若年層を吸引するため「単純生活の場」から「人生エンターテインメントの場」への転換
①「団地ミュージアム」:(国内外の)美術系大学とのコラボレーションによる団地のミュージアム化
・団地内に点在する空室を利用した常設個展会場を設置し、回遊式アートミュージアムとして活用
・団地そのものを巨大なキャンパスと見立てた団地オブジェの制作など
・アートフェスティバルや著名アーティストによるトークセッションなど教育成果発表の場として活用
⇒単純な住空間としての「団地」から訪れて見たくなる「アート団地」へと再定義
②「団地シアター」:(国内外)自主制作映画や(YouTuberなど)動画などのクリエーターを積極的に誘致し動画文化発信の聖地として育成していく
・定期的な自主制作作品の上映会場や動画クリエーターのためのレンタルスタジオなどを団地内に常設
・団地映画祭の開催(各部屋における少人数上映会や団地の形状を活用した大規模なプロジェクションマッピング映像試写会など)
③「団地ホテル」:団地空き室の積極的活用策
・‘Airbnb’型の宿泊施設として空き部屋を運用
ex.インバウンド宿泊者を対象として宿泊期間に応じて割引率を高くする。例えば1か月滞在なら月3万円(1000円/1泊)など
④「団地大学」:企業とのコラボレーションによる学習空間活用
・若者の興味を惹くサブカル系スクールに絞り込み少人数制カリキュラムが団地内に複数点在、一大サブカル団地を形成するイメージ
 
(2)近未来都市のひとつのモデルとしての「棚田団地」の創造
・古き良き昭和の原風景の中に近未来的なテクノロジーが詰まった団地の再生計画を推進
・空き部屋から順次リノベーションを施し、最先端のIoTモデルルームを構築(イメージとしては先端IT企業とのコラボレーションによるハイテクサテライトSOHOを団地内に点在させる)
・複数のIT企業に「IoT団地モデル」に関する企画・実施・運営を委ね自社の生活実験空間として団地を再活用する構想。
また、職住近接の実験空間としても団地の活用を並行して考えていく場としたい。
・IoT化された屋内から一歩足を踏み出すと、昭和レトロ感満載の団地敷地内にお洒落なカフェやビストロが点在する刺激的な空間
・世界でも類を見ない「まるごとハイテク団地」構想(空き室を利用した「植物工場」「ドローン研究所」「3Dプリンター・ラボ 」
「ロボット・カフェ」など最先端技術の棚田を周遊体験できる新しい都市モデル「クリエイティブ団地」を構築する。
⇒旧来の工業団地とは一線を画し、日本が世界へ発信できる新たなインテリジェント都市の在り方を「棚田団地」で実現
⇒世界初の「ハイテク棚田団地(IoT技術集積団地)」のモデルケースとして広く海外からの視察訪問誘致や高度技術者・研究者の移住を後押しするプログラムも併せて検討していくことも必要である。

(3)企業誘致(企業まるごとコラボ団地)のための魅力づくり
・インターネットの出現で在宅勤務が可能となった現代社会において、企業の本社機能が都心にある必要性が薄れつつある。ましてやビジネスマンが毎日都心へ通勤するという行為そのものの必要性は絶対十分条件では無くなりつつある。
また、地方都市への本社機能移転については従業員にとって距離的なバイアスがかかり、多少なりとも抵抗感を感じるだろう。
ならば、都心までおよそ1時間圏内の場所へ本社機能を移転するならばどうだろうか?
企業側のメリット
・税制優遇制度の享受の可能性大
・オフィスビルの賃貸コスト削減
・総合的福利厚生の向上
・突発的自然災害時(地震・異常気象など)における職住近接の効用
…etc
自治体のメリット
・人口増加による税収増効果(住民税・法人税など)
・若年層流入によるの地域若返り効果および周辺環境の活性化
・コラボ企業ブランドとの協業による新しい地域ブランドの確立
・職住近接による地域コミュニティの充実(大人から子供まで、誰もが顔見知り団地)
…etc

海上を埋立て新たな土地を造成し、その上にインテリジェントビルやタワーマンションを建設するという発想からの転換。
既にある遊休施設に人間の知恵と手を加え、より魅力的な街を創造していくことが、限りある資源の無駄を省き、それまでソコにあった地域文化の継承を実現していくという発想の転換が今まさに求められているのではないだろうか。
MOTTAINAI(モッタイナイ)」文化を誇る日本のライフスタイル・イノベーションのヒントが「棚田団地」の再生にあることを改めて提言していきたい。
 
【まとめ】
ニュータウン」⇒「オールドタウン」⇒「ゴールドタウン」への道
〇居住性の再生、資産価値の再生
・変化した時代に対応した機能をつくり出していくこと(団地の空き室は、働く場、学べる場、憩いの場へ。空き地は農地に転換)
・団地の空き室利用者をつくり出す(民泊や若者向け格安シェアハウス、企業とのコラボによるミニラボサテライトオフィスなど
・団地コミュニティを作る(行政・個人・地域の役割分担の明確化/「棚田団地」価値向上マネジメントのための地域NPO組織などを設立)
 
▼【YouTube】都会の棚田「THE 団地」シリーズ