東京未来考:都市疑似体験における好意的な世論形成について

都市はリアルな体験を通してのみ、その本質に迫ることが出来る。リアルな体験なくして、その都市の本来の姿を理解することは困難である。
 
インターネットの発展に伴い、人々はリアルな体験を行う前段として、目指す都市に関する事前情報をできる限り収集することに時間を割くことを重視するようになった。
何故なら、観光にしても居住地を探すにしても、あらかじめ都市の情報をストックすることから始め、様々な検討を繰り返すことで目指すべき都市が「本当に自分の理想する都市なのかどうか?」という疑問に対しバーチャルな体験を通じて確信を得ることで、より失敗のない判断を下したいという心理的作用によるものと考えられる。
 
インターネット以前の街選びは、せいぜいHanakoなどに代表される街情報誌やテレビが取り上げるタウン情報など荒い情報に依存するか、もしくは実際に住んでみることでその都市(もしくは街)の優劣を判断するしか手立てがなかった。
 
しかし、インターネットの爆発的な普及によって、SNSなどによる個人情報の発信が都市体験を行う上で大きな革命をもたらした。
ネット上に溢れかえる都市情報は、実際には都市を体験していないにも関わらず、その土地を訪れる前に、あたかもその都市をすべて体験したかのような気分にさせてしまう。別の土地に居ながらして、目指す都市、街のバーチャル体験ができることで、地図上の距離は消滅してしまった。
そして都市の本質として残されたものは、都市が持つリアルな価値、つまりその場に居なければ決して体験することのできない人と人とのコミュニケーションを代表する街の「空気感」である。
人はその場に行かなければ味わうことのできない「空気感」があることを経験上知っている。しかし、インターネットが全盛を極める現在において、人々が都市における様々な情報をあらかじめ検索することを止めないのは、手軽に膨大な情報を手にすることが出来るからに他ならない。都市を体験するという行為の過程において、この手軽な情報収集という行動が日常化してしまったため、都市部へ人々を吸引するためにはウェブ上の評判形成が都市コミュニケーションにおいて重要な位置づけとなった。
 
人々はウェブ上でバーチャルな都市体験を行い、自分の物差しと合わないと感じた瞬間に、その都市はその人がリアル体験する前に消去されてしまうのだ。
それを避けるためには、ウェブ上で評判を形成するためのコミュニケーション技術が不可欠となる。バーチャルな都市体験の中で、都市に対する期待、賛同、応援、支援、参加などの都市に対する好意的な世論を形成させる仕掛けが重要となる。
 
これまで活用されてきたマスコミの情報発信だけでなく、FacebookTwitter、LINE、YouTube、Instaglamなど各種SNSなどソーシャルメディアから個人の意見が発せられる環境整備、それらの情報が都市に対する好意的な世論を形成する重要なツールとなるのである。
 
ウェブ上での評判を形成するためには「アドボケイツ」(都市を積極的に応援し、より良い都市にするために行動する伝道者)の存在が不可欠である。
(*アドボケイツ=口コミやインターネット上のレビューが中心となる主唱者のこと)
多くの「アドボケイツ」をどのように育成するかが、今後の都市コミュニケーションに与えられた重要な課題のひとつである。さらに「アドボケイツ」の育成のみならず、都市から発せられる情報がウェブ上で好意的な話題となり、拡散していくことも試みなければならないだろう。その際の重要なポイントは、情報そのものにコンテンツとしての魅力を持たせることである。

〇アドボケイツたちに支持されるための団地再生空想プロジェク「D+α Project」
都市ストックのひとつである「団地」をコミュニケーションスポットとし、アドボケイツたちに支持されるための情報コンテンツとはいかなるものなのだろうか?
「D(団地)+α」というマッチングにおいて考えられるものを列挙してみたい。
 
D+スポーツ(フットサル、スケボー、3on3などアーバンスポーツ施設やドローン競技などハイテクスポーツのデモ施設の開設)
D+農業(団地内植物工場:希少野菜の水耕栽培や観葉植物育成施設)
・D+アイドル(団地アイドル、団地ゆるキャラ:全国団地による組織化、団地コンサートの実施など)
D+観光(団地観光マップ、団地リアル脱出ゲーム、団地周辺観光ルート開発:ガイド育成)
D+映画(団地映画祭、団地ドラマ、団地動画/プロジェクションマッピング上映会など)
D+IoT(IoT団地モデルルーム)
D+ロボット(全自動化団地)
D+シェアリング(シェアエコノミーモデル団地:団地版UberAirbnb、シェアサイクルなど)
D+自給自足(自給自足型エコシステム団地:有機ゴミの再資源化、食糧生産、農業専門家による勉強会など)
D+アート(団地ギャラリー:建物外観デザイン、オブジェ展示、創作スタジオ/近隣美術大学の作品展示場としてのコラボ機能)
D+メディア(団地専門雑誌、団地FM局[団地専属DJ]、団地SNS、団地新聞、団地地図、団地フラッグなど)
D+広告YouTubeなど動画サイトを活用した映像プロモーション、沿線電鉄会社とのコラボレーションPRなど)
D+専門家(有名パテシエ等のアンテナショップ、有名デザイナー団地、団地出身芸能人などVIPとのコラボ空間の創出)
D+グッズ(団地家電、団地ブランドノベルティ、団地デザインのアパレル製品など)
D+フード(団地ブランドのスイーツ、B級グルメブランド野菜を使ったメニュー、団地ワイナリーのワイン、団地ビール醸造所など)
D+LIFE(団地生活ガイド、団地生活写真集、)
D+セキュリティ(防犯・防災モデル団地、避難拠点、非常用食料備蓄施設、核シェルターなど)
D+OFFICEサテライトオフィス、Lab、宅配集積所、地元生産品アンテナショップなど)
D+家族(多世代世帯、育児・介護、冠婚葬祭、収穫祭、年中行事)
D+ファイナンス(IoTと連動した団地内仮装通貨の流通・市場実験場として)
D+エネルギー(自家発電システムの構築:太陽光、バイオマス発電等による電力自足と余剰電力販売)
D+ホスピタル(地域総合病院との連携による団地内診療ステーションの運営など)
D+マーケットフリーマーケット、団地初のコンビニ、団地商店街の復活など)
D+バリアフリー(屋内外の非段差化、スロープ式昇降階段、団地内エアシューター設置など)
D+アシスタント(巡回式御用聞き・コンシェルジェの設置、孤立化防止)
D+ホテルスマホ自動開閉錠による賃貸ルーム、住民による共同管理宿泊施設)
D+庭園(自動栽培による庭園、四季折々の花まつり、団地盆栽園など)
D+コミュニティ(団地カフェ、団地図書館、団地スポーツジム、団地コミュニティホールの開設/共同購入システム、団地会議、「団地の駅(地元農家との共同運営)」)
D+トラフィック(団地近隣巡回無人交通・自動運転コースのモデル化、ライドシェアの団地内ネットワークシステム構築など)
D+エデュケーション(サブカル系ジャンル専門、都市開発専門、IoT開発専門など今後の団地運営に関する人材育成の場から住民の教養を高める趣味講座の場まで幅広く設定:近隣大学とのコラボレーションによる「団地大学公開講座」などを定期的に実施)
 
予算をかけなくても実現可能なものから経済的・法的にクリアしなければ実現困難なものまで、思いついたアイデアをざっと列挙してみた。
アドボケイツたちに支持されるための空想プロジェクトはまだまだ沢山あるだろう。
近代以降、拡大路線で成長を推し進めてきた日本の都市は、画一的な価値とは異なる独自の豊かさを見出していく必要性に迫られている。また、都市はそれぞれの個性や目指す方向性を明確にし、住む場所、働く場所、学ぶ場所として選ばれることに意識的にならざるを得なくなっている。
そのための都市実験場として規模的にもコンパクトで、「見える化」が実現しやすい「団地」という都市ストックの活用方法について今後も積極的に発信していきたいと思う。

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