東京未来考:「コンパクトシティ団地」を空想する

大都市、とりわけ東京で推し進められている超高層ビルラッシュは、グローバリゼーションの流れの中で勝ち抜くための産業経済の集積を急いでいる姿であり、世界中が模索している「サスティナブル・ディベロップメント」(持続可能な開発)のコンセプトとはほとんど無関係な活動である。
また、近年予想される巨大地震に対する都市のあり方についての回答を引き延ばしたまま猛烈な再開発を進めている。
 
首都・東京におけるコンパクトシティの考え方は、絶え間ない「スクラップアンドビルド型」の土地利用から「ストック重視型」の土地利用への方向転換が大きな目標となる。
 
旧来の価値観・システムからの意識転換を行うには以下の視点が重要になる。
(1)「スケール」と「スピード」を競う価値観からの転換(人口増加や市街地の拡大を都市発展要因と考える視点からの脱却)
(2)物質的な豊かさの追求から生活の豊かさへの転換
(3)自動車依存社会からの脱却(環境問題や資源問題の克服など)
(4)自然、農業、農村軽視からの転換(食料自給率問題の克服など)
(5)「多数決」重視の民主主義からの転換(多様性、少数意見を尊重する柔軟な社会の実現)
 
以上、5つの視点から「コンパクトシティ東京」の理想モデルを空想してみたい。
(1)社会全体の無駄の排除
すでに多くの投資が行われた市街地にある低未利用地や使われていない建物を有効活用することで都市ストックの無駄を防ぐ(遊休資産の再活用)
(2)地域コミュニティの育成
近隣に様々なタイプの住宅が供給されれば、いろいろな社会的階層の居住者がともに生活するコミュニティが形成され地域社会が安定する。また、コミュニティと近隣の活動が強まれば、生活の質が向上し、安全と活力が増し、ビジネスやサービスにとっても好ましい環境が育成されることが予想される。また、コミュニティ強化の実現によりシェアリング・エコノミーの導入についての親和性が高まる。顔の見える住人で構成されるため、共同利用、共同購入などの調整(合意・決定)が図りやすい環境が育つ。
(3)高密度化
複合用途を配置することにより高密度な居住が可能となり移動距離が減少する。自動車に依存せず、徒歩と自転車利用により地域のサービス施設が利用可能となる。
良好な地域の定義とは、大規模な連続する排他的地域を持たず、どの集団にも同じような利用のしやすさを感じさせる地域である。
(4)外延的開発の抑止
都市郊外の開発を抑制することにより、農村や農地景観など自然環境を保全できる。
(5)地域運営の自律性
年齢、所得、性別、社会階層、人種、自動車利用、身体機能などの様々な特徴を持った居住者の交流が盛んなコミュニティが形成され、地位の現状、将来に関する方針の決定や運用について、主体的に参加できる地域自治が行われ、公平に生活できる条件が確保される
 
◎都市ストックを活用した「コンパクトシティ団地」空想モデル案
 
東京における「負の遺産」化が進む『集合団地』にフォーカスした「コンパクトシティ団地」モデルを設計する。
 
<空想コンセプト>
(A)超高齢社会対応型団地:個人、建物、インフラ、コミュニティの経年変化(エイジング)に適応可能な「エイジング・フレンドリー」団地
(B)持続可能型団地「自給自足型×シェアリングエコノミー」団地

<空想イメージ>
(A)
・超高齢社会に創造される都市は「時間的な垂直展開」と「地理的な水平展開」の両方を兼ね備えた都市である
・シニアだけでなく子育て世代や学生が集うような多世代共存型団地
・居住者の健康寿命を延ばし、新産業として雇用を創り出す課題解決型団地
(ex.居住者の8割が健康であることを目指し、「介護させない」ための健康支援に力点が置かれている。また、介護で儲けるのではなく、介護させないことで儲ける仕組みづくりが推進される)
・団地発の雇用創出
(健康に関するビッグデータのストックなどにより予防医学、食事、IT、生涯学習等の関連雇用が綿密に準備される。特に健康に関するビッグデータ解析は地域での付加価値の高い雇用として有望である。また、シニアが再び学校に通うことで、少子化問題に直面する教育機関にとってメリットが生まれ、官民産学の‘四方両得’をもたらすことが期待できる)
 
(B)
・自給自足を促進するためのテクノロジー導入(農業団地構想)
・食糧やエネルギーの自給率を段階的に高めていくことで「自給自足型エコシステム団地」を目指す
・大学や民間企業など最先端テクノロジーの実証実験場としての機能も併せ持つ
・人間が労働力を提供してきた従来型農業からマシン管理(Agtech)する都市型「植物工場」の実験場として団地を活用(「団地内植物工場」は最終目標としてAIの管理下で気象条件に影響されることなく、安全・安心な作物をオンデマンドで安定供給することができるようになる。無駄を極限まで削ぎ落すテクノロジーの導入により、生産に関する限界費用をゼロに近づけることが可能になり、限界費用ゼロで生産された作物はコミュニティにおいて無料でシェアすることも理論的に可能になる)
・マネー資本主義に依存しないサブシステムの創造(お金が乏しくなっても、水、食料、燃料が無料で手に入り続ける仕組みづくりは「安心安全ネットワーク」の究極のカタチとなる)
・団地コミュニティで取引される商取引は、すべて仮装通貨「D-CASH(仮名)」で行われる(コミュニティ内での貢献活動に対する労働時間に対し、インセンティブとして「D-CASH」が支払われ、また、団地内でのサービス・材を購入することも可能なコミュニティ専用仮装通貨のモデル地区として実証実験を行う→最終的には区・市町村エリアまで拡大想定)
・近隣地区に所属する専門家(農業技術者、IoTコーディネーター、システムエンジニア、データアナリスト、防犯・防災アドバイザー、介護士、弁護士、ファイナンシャルプランナー、フォームアドバイザー、インテリアデザイナー、イベントプランナー、デザイナー、各種講座講師、栄養管理士、調理師、ファッションデザイナーなど)を「団地コンシェルジェ(仮名)」として組織化し、高密度インテリジェント団地として形成していく。また、居住者(特に健康な高齢者)においても個々人の経験に応じた技術・能力を発揮してもらうためコミュニティに提供できるメニューをエントリーすることが可能である
 
◎超高齢化社会におけるビジネスモデル創造実験場「コンパクトシティ団地」
 
日本は高齢化のフロントランナーである。
東京近郊に点在する「コンパクトシティ団地」を創造し、具体的な施策を実行していくことで、高齢者がアクティブな生活を送るためのセーフティネットが出来、結果として更なる技術進歩を誘発しながら都市の活力の底上げに貢献することになる。また、高齢者の健康意識の高まりとともに予防医学セルフメディケーション分野における取組が活発になり新たな雇用機会を生み出す可能性も大いに秘めている。
コンパクトシティ団地」での実証実験を重ね、高齢化ビジネスモデルの成功事例を国内外に輸出することで先行者利益を確保できる可能性も秘めている。
 
【参考出典】
○「日本型魅力都市をつくる」(青木仁・著/日本経済新聞社・刊 2004)
○「日本版コンパクトシティ~地域循環型都市の構築」(鈴木浩・著/学陽書房・刊 2007)
○「シビックプライド」(シビックプライド研究会・著/宣伝会議・刊 2008)
○「超高齢社会だから急成長する日本経済」(鈴木将之・著/講談社・刊 2017)
○「シェアリング・エコノミー~Uber,Airbnbが変えた世界」(宮﨑康二・著/日本経済新聞社・刊 2015)
○「コンパクトシティ ―持続可能な社会の都市像を求めて」(海道清信・著/学芸出版社・著  2001)
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